第58章 【双子の弟】×【心中】
「最後がこんなに幸せな日で良かった。」
蒼依は嬉しそうに、そんなことを言った。
「それって、」
「双子辞めるって言ったじゃん。
辞めるならそれしかないでしょ?」
〝それ〟 が何を指すかは、私にも分かった。
「そんなことされたら私は、
どうやって生きていけばいいの?」
二度と会えなくなるくらいなら、双子のままでいい。
例え嫌がられても。
「……じゃあさ、一緒に来てよ。」
悲しく笑ったその目は、
一緒に来て欲しいと願っているように見えた。
「でも、悲しむ人が居るかもしれないし」
「そんなの、俺達には居ないでしょ?」
苦しい止め方だったかもしれない。
痛い所を突かれて言葉が出てこない。
双子だからと言う興味だけで集まってくるだけの人と、
双子だからと嫌う親。
いつも私達は2人だけだった。
2人で居なくなれば悲しむ人も居ない。
「ね、ダメ?」
「一人で行くなら許さない。……私も連れてってよ。」
「本当?嬉しい。」
こんなに嬉しそうな顔、初めて見た気がする。
「うん、本当。」
「…っん、」
もう一度唇が触れ合って、
ちゅ、と小さな音が静かな部屋に何度も響く。
恥ずかしいけれど嬉しくて、
この時間が永遠に続けばと思ってしまう。
死んでしまうのは別に怖くはなかった。
1人で生きていく方が怖いから。
「じゃあ、明日の朝に。」
その日は久しぶりに、2人同じ部屋で眠った。