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色々彼氏 。【短編集】

第58章 【双子の弟】×【心中】


それは突然のことだった。

「俺、双子辞めたいんだけど。」

何言ってるんだこの人。
少しの無の後、最初に浮かんだ言葉がそれだった。

「雨衣は無いの?思った事、」
「…」

無いと即答出来たらどんなに良かったか。
なのにそれが出来ないのは、私も同じだから。


「…あるよ。1回だけ。」

嘘を吐いた。1回だけなんかじゃない。
双子じゃなければ
家族じゃなければと何度思ったことか。

「そっか、」

小さく、くしゃっと笑った。
その表情が何を表しているのか私には分からなかった。

「やっぱり考えることは同じ、ってことか…
…ね、本当に1回だけ?」

結局隠し事すら、嘘をつくことすら出来ないんだなぁと実感した。

これでも私、嘘は上手い方なんだけど。

「いつも思ってるよ。」

今度は嬉しそうに笑ったように見えた。

「雨衣、」

「触ってよ。……ほら、恋人同士みたいに。」

そう言って私の手を掴むと自分の方へ寄せる。
ここで触ったら、もう多分戻れない。

気持ちが知られてしまったから、
どうせもう戻るつもりもないけれど。

蒼依のことを抱き締める。
顔が見えないから、本音がすらすらと口から出てきた。

「蒼依のこと、好きだよ。
家族として、双子の弟としてじゃなくて。恋心で」

「………」

「デートしたり恋人繋ぎしたり、キスしたい。
ずっと触れたくて堪らなかった。」

「………うん、」

ずっとこうしていたかったけど、
蒼依はそうはいかないみたいだ。

「ずっとこのままとか無理。キスしていい?」
「そんなこと、聞かなくても分かるんじゃない?」

「…うん、そうかも、」

蒼依が私の方を見る。
その顔は、双子なのに私とは全く似ていない。

「……っ、」

触れ合うそれは一瞬だけだったけれど、
その一瞬で唇が熱を帯びていく。

恋人同士ですることがこんなに嬉しいものなんて、
初めて知った。
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