第58章 【双子の弟】×【心中】
「雨衣、起きてよ。」
まだ早い時間に、蒼依がトントンと私を叩く。いつもは私の方が早く起きるのに、なんだか不思議だ。
「本当に良いの?」
いい場所を知っているからと言われ、
朝ごはんも食べずに2人歩いてそこへ向かう。
「当たり前。今更取り消すなんて無理だよ。」
なんだか幸せな気持ちだった。
いくら双子でも、命が尽きる時が同じとは限らない。
だからこうして一緒に最後を迎えられることが嬉しい。
そう言ったら蒼依はどんな反応をするだろう?
「……ほら、着いたよ、」
そこから見た景色から、
世界はこんなに広いんだと初めて知った。
別に世界の全てを見たわけじゃないけどそう思った。
ここから2人くらい消えたって、誰も気が付かない。
「……愛してる……ずっと、
生まれ変わっても絶対見つけるから。」
私の目をしっかりと見つめてそう言った。
その言葉が一番嬉しかった。
「私も愛してる。
きっとすぐに会えるから絶対に大丈夫だよ。」
根拠はないけれど、何故か自信はあった。
どうしてだろう。
そこが地獄でも、暗い闇でも、
光はすぐそこにある気がした。
階段を上っていた時から感じていたけれど、
随分と高い場所だった。
下を見下ろすと、一瞬怖くも思えた。
でも蒼依の手を取ると恐怖はすぐに無くなる。
「今までありがとう、姉ちゃん。」
姉ちゃんと呼ばれたのは今日が最初で最後だ。
昔を思い出しては、色々なことがあったなぁなんて
思ったりする。
繋いでいた蒼依の手が、私の手を強く握る。
さっき2人で決めた合図だ。
どうか生まれ変わったその時は、
双子じゃなくて、幼馴染とか学校のクラスメイトとか。
偶然の出会いで一目惚れとか、
そんなのでもいいかもしれない。
どうか、双子じゃなくて
違う関係から始められますように。