第37章 【我儘王子】×【真面目女執事】
それから、王子は私の前でだけは、ワガママを言うようになった。
「なんか…お腹空いた。」
「…秘密ですよ?」
お腹が空いたと言われれば、持っていたものを差し出した。
本当はあまり良くないのかもしれないけど…。
「…これ…」
「お握りです。本当は自分用に取っておいたんですけど…私はもう要らないので。毒とかは入ってないので大丈夫ですよ。塩で味付けしただけですし、お口に合わないかもですが。」
「…ありがと。」
そう言って受け取った王子の顔は嬉しそうで、渡して良かったと思った。
「…!」
ラップを剥がして、大きく1口齧る。
1口食べると、止まらずどんどん食べてくれた。
「こ、これ、美味しかった!」
目をキラキラさせて言う王子に、私も嬉しくなる。
「それは良かったです。」
余程気に入ってくれたのか、それからは何度か頼んで来るようになった。
眠れないから何かして欲しいとか、寂しいから隣に来て欲しいとか。
そんなワガママも言うようになった。
「はい。」
その度、私は王子が眠れるように、寂しさが紛れる様に色々な事をしてきた。
ただの王子と使用人のように。