第26章 信長様生誕祭~指令・サプライズパーティーを遂行せよ!~
5月12日。それは安土城城主、織田信長の誕生日―
天主の奥の部屋にある、かなりの存在感がある天蓋付きのベッド。
それは城主「織田信長」と、妻歌恋が愛を育む為に南蛮の商人に用意させたもの。
毎朝隣には愛する妻が居て、目を覚ますと「信長様、おはようございます。」といつまでも変わらない可愛いくも柔らかい表情で挨拶をするのを見るが日課だった。
もちろん、誕生日当日もそうやって朝を迎えるはずだった・・・。
「ん・・・、もう朝か・・・」
なんとなく布団の中が冷たいように感じ目を覚ますと、ふと隣に歌恋が居ない事に気づいた。
(全く・・・こんな朝からどこへ行ったんだ?)
ベッドから降り、早く目が覚めると良く安土の街並みを見ている事の多い歌恋。
とりあえずと窓の方へと行くもその姿は見当たらず・・・。
部屋を見回すもその姿は見えず、別の部屋で寝ている子ども達の部屋へと向かうことにした。
「ここにもいないとはな・・・、しかも子ども達も一緒に居ないとは。何かあるな。」
『まぁ、よい』とつぶやきながら朝餉の時刻になり、広間に向かい、入ると・・・
まだ誰も揃って居ないというよりも誰も居なかった。
そこへ・・・
「父様!お誕生日おめでとうございます!」
シュッと音を立てて、襖を開けて入ってきたのは天音。
「あぁ、今日はそんな日だったな。」
「これは、母様からの伝言です!そこへ書かれている所へ来て欲しいとの事です!では・・・」
謙信がお気に入りでよく春日山城に遊びに行ったり、佐助と遊ぶうちに忍びの術を体得した天音が、天井から出てきたと思ったらすぐに天井へと隠れてしまった。
天音から渡された文には…
『信長様へ
時陽と一緒に音羽屋に行ってください。
』
それだけが書かれていた。
(時陽と音羽屋へ行けと・・・)
文を読み、立ち上がろうとすると廊下から女中達の声が聞こえてきた。
「お待ちください!時陽様!」
(ん?何の騒ぎだ)
上座から立ち上がり、廊下へ向かうと小走りで走る時陽を追いかける女中達の姿。
時陽は一昨年生まれ、もうすぐ2歳になる末子
。
歩くのが早く、すばしっこい為女中達が手を焼いている。
「時陽。何をしている。」
「ちちうぇー!」