第23章 安土城の夏休み~in温泉
夏、安土城の面々は暑さを凌ぐために安土から離れた山間部にある温泉に来ていた。
いわゆる“夏休み”のようなもので、その温泉宿は武将達のみしか知らない『秘境』で、歌恋や子ども達は初めてその温泉に訪れた。
「信長様?ここは?」
「織田家が古くから付き合いのある温泉宿だ。」
馬で数日走らせ着いたところは山の奥深くにある温泉宿、初めて訪れた歌恋は信長に尋ねた。
「こちらの温泉宿は安土城でも秀吉様初め武将の皆様しか知らない秘境の地で、夏は山に囲まれ涼しい風が吹き、冬は温泉の地熱効果で宿全体を暖かく、身体を休めるには快適な場所です。」
三成が温泉宿の広報担当かのように説明をし、歌恋は関心しきっていた。
「ここは宿で働く者達の子どもも多くいる。普段同じ年頃の子どもと関わりがあまり無い舞桜や天音、結人には良い遊び相手になるだろう。」
この温泉宿は信長の計らいで、戦や病気で旦那を失った者の働く場所として提供し、その子どもや、宿で働く者同士で結婚した者などの子どもを日中預かり、宿仕事を続けらるようにと場所を設けた。
今では常に20人ほどの子どもが預かり、上のものは読み書きを下のものに教えるなど、現代よりもある意味画期的な制度を作った。
「日中は子ども同士で遊ばせればお前も少しはゆっくり出来るだろ。」
「夜はたっぷりお前を愛でてやる。」
馬に跨ったまま後ろにいる歌恋の方へ向き、顎を掬い唇と唇が触れるか触れないか瀬戸際の所で止め、今宵待ち構える事への期待を膨らませた。