第16章 届けこの思い~幸せはすぐそこに~
【京都本能寺跡】
〈信長目線〉
急に雲行きが怪しくなり、雷が遠くでなりだし、徐々に近づいてくる。
「来たか…」
信長は三ヶ月前に歌恋と離された日の事を思い出していた。
あの日の事は忘れはしない。
歌恋を取り戻す為に墓もたて、家督を秀吉に譲った。
佐助に言われ文も書いた。
それをどこかで歌恋が見れるようにと・・・
そして、目を閉じると何故か信長にしか聞こえないように『もうすぐ会えるよ!』と子どもの声で聞こえた。
『お前は誰だ?』
『・・・・・・』
ふと周りが白い光に包まれると秀吉が声を上げた。
『お館様!』
目を開けると光の中心に渦を巻いてる雲のような物が見え、人影が見える。
「歌恋!」
思わず声をかけ、腕を上に差し出すと眠っている歌恋が俺の腕に降りてきた。
バサッー
しっかりと重みを感じる事ができ、抱きしめ名前を呼んだ。
「歌恋!!」
すると歌恋の身体が僅かに動き
「んっ・・・。」
うっすらと目を開けた。
「信長様・・・?」
名前を呼ばれもう一度抱きしめた。
自然と涙がでた。
ようやく戻ってきた愛しい妻となる歌恋をこの腕で抱きしめることが出来た事の嬉しさなのか・・・
「ただ今もどりました…」
「んっ?、ん・・・」
その声を聞いてたまらずに俺は口付けをした。
「よく戻って来たな…」
「はい・・・」
見つめ合うと同時にどちらともなくもう一度口付けをかわした。
深く・・・、お互いを慈しむように、あえなかった時間を埋めるように・・・