第14章 叶わぬ思い~離れていてもあなたを愛しています~安土編②
〈光秀視点〉
佐助のあの提案は一瞬驚いたが、それでも歌恋が戻ってこれるならとお館様はすぐにその提案を飲んだ。
自分が狙われているなんて気にもせず・・・。
佐助から未来で言い伝えられている話を聞いた。
それによると俺がお館様に謀反を起こしてお館様が自害すると。
そんなことは有り得ない、お館様あっての俺がある。
秀吉のようにむやみやたらと詮索せず、それでいて仕事に関しては一任して下さる。
秀吉と違って俺はこの性格故に勘違いされる事もある。
歌恋が来たばかりの頃にも1度秀吉に問い詰められる所を目撃され、あの時の歌恋は心配で泣きそうな顔をしていた。
こんな俺に心配するなんて変わったヤツだと思っていたが…。
俺はお館様に忠誠を誓っている。
あの方は天下統一を成すお方。
その為なら秀吉にも劣らずにこの命捧げよう…。そう思う。
だからこそ俺はお館様に言った。
「俺をお館様の死んだ事の理由にさせて下さい。」
だが、お館様は一言
「理由などどうでもいい。お前を理由にしなくてもいくらでも作れる」
そう言ってくださった。
「歴史的にそうなっているのならそうした方がいいのでは?」とも言ったが・・・」
「本能寺で業火に巻き込まれて死んだことにしておけ。」
「俺はあの時歌恋が来なければそこで死んでいたかもしれん。それだけだ。」
結局そこで落ち着いた。
今まで何人もの女と寝た。
何人もの女を抱いた。
敵も含めて。
だが、歌恋は俺の前で子どものような表情をしたかと思えば、お館様には女になるあの変わりように何故か引っかかった。
あのように屈託のない笑顔を見せ、揶揄えば顔を赤くして怒る。
花を見れば素直に言葉が出る。
お館様の女とはいえ、こんな女二度と現れないだろうと思った。
抱きたいと思わないことも無かったが、ごく普通の日常を共に過ごしているだけでも充足感があった。
だからこそ必ず取り戻すとー