第10章 消えたココロ~アレクサンドリア~
タイチside.
俺がこの国に来た目的はなんだ。
妹を探すことだ。
俺はこのまま彼女達について行っていいのだろうか。
「姫さま~」
地下通路への階段へ走るスタイナーさんを横目に考える。
彼女達とは別れてこの場に残るか?
元々俺の目的地はアレクサンドリアだったはずだ。
残ってフライヤさん達と一緒に殿になって……いやだめだ、俺がここに残っても足でまといすぎる。
俺はどうするべきだ?
考えろ……俺がするべき選択……この場は一旦逃げて、逃げのびた先で……
「タイチ、はやく!!」
ダガーちゃんの通る声が響く。
弾かれるように俺が走り出したとき、左腕に鋭い痛みが走った。
「ッ!!」
見るとモンスターが俺の腕に噛みついている。
フライヤさんは?
女将軍はどうした!?
女将軍はモンスターにやられたのか、床にうずくまって寝息をたてている。
もう一方のモンスターをフライヤさんが相手どっていた。
彼女一人ではモンスター二体は手に余るらしい。
噛まれている腕を少し引いてみるが死ぬほど痛い。
これは簡単には離してくれなさそうだ。
暖炉の方へ視線をやれば、ダガーちゃんが青ざめた顔でこちらを見ている。
とんでもなく恐ろしい光景を見ているような彼女の顔に、こんな時なのに少し笑ってしまった。
俺って弱いよな、頼りないよな。
「頼りなくてごめんな……でも大丈夫、きっとまた会える」
根拠のない言葉だが、今はこう言うしかない。
泣きだしそうなダガーちゃんをジタンが引っ張っていった。
これでいい。
ダガーちゃんにはジタンがついてる。
俺は懐からナイフを取り出しモンスターの目に突き刺すと、モンスターは俺のナイフごと離れていった。
左腕からおびただしい量の血が流れている。
レイナの安否を心配する前に俺が死にそうだ。
俺はここに残るべきなのか?
誰に問うでもなく、暖炉の前に陣取るモンスターを睨む。
グルルと唸るモンスターに、そうだと肯定されているようだった。
少しずつ揺れていた心が落ち着いてくる。
俺は大きく息を吸い込んだ。
だったら俺は生き抜いてやる。
生きて、レイナを見つけ出してやる。
ポーションをあおると、俺は女将軍の元へと駆け出した。