第8章 遭遇
窮屈に手足を縮ませて揺られるリズムを感じる。
右、左、右、左、と揺れていたかと思えば、ときたま身体が宙に持ち上げられてどすりと落ちる。
閉園においやられた遊園地の遊具でさえもう少しましな乗り心地なのでは、と思わずゲンナリしてしまう。
『スタイナー、まだかな……』
『ええ、いいかげん頭がおかしくなりそうだわ』
私が思わずぼそりと呟けば、彼女、ダガーのぐったりとした声が返ってきた。
私達はスタイナーの手持ち袋の中にいた。
衣類に包まれ、押し込まれ、丸まった身体はゆらゆらと袋ごと揺れる。
ダガーが気持ち悪そうにうめき声をもらした。
乗り心地ももちろん悪いのだけど、彼女が疲弊している理由はそれだけではないだろう。
頭が割れそうなほどの刺激臭がしている。
私達と一緒に袋に詰められた、ギサールの野菜のピクルス漬けだ。
リンドブルムの珍味らしいけど、この臭いはどうにかならないのかな?
臭いがひどくて頭が二つに割れてしまいそう。
『……もう南ゲートの中なのかしら』
『さっき兵士の人との話し声が聞こえたから、うまく中に入れたのかもしれないね』
私達がこそこそと呟き合っていると、地面にドスンと置かれるような衝撃がきた。
私達は安堵のため息をつく。
やっとこの居心地の悪い旅も終わりを告げるらしい。