第6章 放たれた刺客〜カーゴシップ〜
スタイナーside.
山の麓に備え付けられた一軒の小屋は、外から見るとかなりこじんまりと見えたが、中に入るとその狭いスペースいっぱいに生活用品が置かれ、ここで生活することも可能かもしれないと思えた。
「わしゃコーヒーの香りをかぐと心が落ち着くのでな。おまえさんもどうじゃ?」
先ほどから片隅でなにやらコトコトやっていた老人がマグカップを差し出してきて、思わず受け取りそうになる。
「や、これはかたじけない……そのような話はしておら〜ん!」
マグカップを持ったままの老人は、表情の読めない顔でこちらを見詰めるばかり。
そのことに再び苛立ちが募る。
こんなにも頼み込んでいるのに、理由まで説明しているというのに……なぜ、この老人は教えないのだっ!!
イライラ、イライラ、我慢するのももう限界だった。
「素直にカーゴシップの来る時刻を教えるのだ! さもなくば、ここをアレクサンドリア王家が一時的に接収する!」