【うたの☆プリンスさまっ♪】あなたの全てが好きだから
第1章 輝いている彼
(すごいな……)
まだ本人が登場したわけでもないのに、会場の盛り上がり方が半端ない。こんなに大きな歓声を受けているあなたをとても誇りに思う。
映像は引き続き流れていく。嶺二が乗った車が走り出し、いきなり場面が切り変わった。海辺のベンチで本を読む人物が映し出される。
「藍ちゃん……」
美雪が隣で小さく呟き、彼女の顔を盗み見ると涙を流し始めていた。もうすぐ本人に会えると思うと、感情が昂ってしまうのだと思う。
画面には、本を高速で読み進め、腕に付けた時計を見る藍くんが映っている。そこへ、ビートルがやって来た。
「あ……」
(嶺二が藍くんを迎えに行く設定なのか……)
他の女の子たちが泣いたり叫んだりしているのに、私は冷静に流れる映像を見つめている。彼らがどのようにしたらファンが喜ぶか考えながら、撮影したのかと思うと嬉しい気持ちが溢れて来る。
映像では、藍くんが振り返って笑顔で嶺二に手を振る。しかし、すぐに腕時計を指で差して怒る。それに対して、嶺二が両手を合わせて困ったように眉尻を下げてごめんと謝る。
その場面に少しだけ笑ってしまった。いつもはキラキラしている彼がおっちょこちょいな姿を見せることに。まあ、普段も十分ふざけているから、ファンにも不自然な感じには映らない。よく出来ている。
その後、カミュくんと蘭丸くんも出て来た。