【うたの☆プリンスさまっ♪】あなたの全てが好きだから
第1章 輝いている彼
「近!? めっちゃ見えるね!」
2列目に来た時点で感じていたが、本当にステージが目の前にある状態だった。ここなら、彼らの顔もはっきり見ることができる。今までのライブで、1番近い席だ。
「今何時?」
ステージに見惚れていた私の手に持っていたスマホを見て、美雪は聞いて来た。私はすぐにスマホの画面を開いて、時間を確認する。
「16時だよ。まだまだ時間はあるね」
「オッケー! ちょっとトイレだけ行ってくるね」
「うん」
私が返事をすると、最低限の荷物だけ持って美雪はお手洗いへ行ってしまった。さっき入り口を見た時はそんなに並んでなかったから、きっとすぐに戻って来るだろう。
「……」
他の人が周りの人と仲良くなって、セトリの予想や席が近すぎて興奮して話している中、私は1人……黙ってステージを見つめていた。
(……気付く……かな……)
『もし、ライブに来てくれたら……その時は絶対、見つけるから』
「……」
そんな昔の約束、覚えてないかもしれない。覚えていたとしても、こんな何千人といる会場の中からたった1人を見つけ出すなんて……不可能に近い。
(考えても仕方ないか……)