【うたの☆プリンスさまっ♪】あなたの全てが好きだから
第1章 輝いている彼
「もうそろそろ中に入ろうか」
「ええ」
亜紀ちゃんの言葉に賛同して、私たちは東京国際フォーラムの中へと入った。中はとても綺麗で、近代的な内装をしていた。
「美雪ちゃんと桜ちゃん、席番どこなの?」
「私たち、2の33と34なんだ!」
「え!? 隣同士なの!? めっちゃいいじゃん!」
亜紀ちゃんと麗奈ちゃんは目を見開いてびっくりしている。それもそのはず、今回のライブはお一人様チケット1枚までの購入で、ライブ会場のキャパもいつもより小さいことから、チケットの倍率は跳ね上がっていた。そのような状態の中で、ライブチケットが当たり、なおかつ隣同士なんて奇跡としか言いようがない。
「私、7の26なんだ」
「私は5の28。センターステージより、ちょっと左寄りなの」
少し残念そうに麗奈ちゃんは言った。どうせ見るなら真ん中の席で見たいと思うのは当然だろう。
「まあ、でも……入れなかった子もいるし、もっと後ろの子もいるのに文句は言えないよ」
亜紀ちゃんは眉を下げて、少しだけ笑った。
これもファンが感じるジレンマの1つだ。入れるだけマシだと思う半面、どうせならもっといい席でライブを見たいと思ってしまう……ヲタクは常に感情が複雑に入り乱れている。