第2章 静かの海で
微笑んだとわに手を差し伸べ縁側から立たせる。
そしてふと湧いた彼女ならあり得る疑問を投げかけた。
「まさか通りかかったヤツ片っ端から一緒に寝ようなんて言ってないよな?」
「そんな事しないわよ!通りかかったの薬研だけだし、他に誰かとこうしてお話ししても、怖い夢の話も、一緒に寝ても薬研にしか言わないわよ?」
「ならよし」
手を繋ぎながら審神者部屋へと向かい足を踏み出し。
とわのその答えに満足しながら隣を歩く、俺とほぼ変わらない背丈の彼女の頭を撫でる。
するととわはくすぐったそうに微笑み、繋いだ手にきゅっと力を込めた。
「薬研に触られるの、好き」
「俺もとわ触ってるの、好き」
ひんやりとした静かな廊下にふふっと小さな彼女の笑い声が響く。
それに少し強く手を握り返す事で応える。
そうすればとわはまた満足そうに微笑んで。
「薬研」
「ん?」
「好き」
「そりゃどうも」
「そこは『俺も好き』でしょ?」
今度は不服そうに眉根を寄せ、繋いだ手をぶんぶんと前後に振る。
「此処、まだ廊下だから。部屋着いたらな」
そう言いつつも、すぐ横にある小さな形の良い耳に軽く口づける。
するととわは一瞬肩をびくっとさせ、月明かりの中、頬を染めた。
「今の不意打ち意地悪だ…」
「いーや、愛情表現」
しれっと言って二階へと続く階段に差し掛かると。
繋いだ手の甲にちゅっと口づけされる。
「部屋に帰ったらこんなんじゃなくて、もっといっぱいお返しするから!」
突然の口づけと突然の宣戦布告に。
今度は俺の頬に熱が集まり、その柔らかな感触に驚き目を瞬かせる。
するととわは天使のような笑みの中、薔薇色の瞳に悪戯な色を乗せ。
繋いだ手にもう一度口づけを落とすと俺の手を引き、とんとんと小気味良く自室へと階段を上がった。