第1章 冬
「もう2時過ぎちゃいましたね。」
パソコンの時計を指差す啓太。
「あっ、マジで?お肌のシンデレラタイム過ぎちゃった。」
ぺちぺちと頬を叩く香苗。
いかにも女の子な発言に啓太はくすっと笑う。
「香苗さん、すっぴんでも肌綺麗ですよね。」
「何を言う。毎日がニキビとの闘いだよ。」
「へぇ、意外。」
その白い肌をよく見ようとするが、視界が少しかすんで見えた。
ふわぁー。
啓太の口から大きな欠伸が出た。
「すっごい眠そう。」
香苗はおかしそうに笑う。
「香苗さんは眠くないんですか?」
「ぜーんぜん。」
ぴんぴんした様子で香苗は両拳を頭上に上げる。
元気なのはいいことだけど、それはそれでどうなんだろうか。
「原田はまだ帰らないの?」
啓太は少し時間をかけて返事を考える。
「んー・・・まだいます。」
椅子に大きくもたれかかって天井を見上げた。
やっと2人きりになれたんだから、簡単に帰れるわけないでしょ。
啓太は焦点を合わせる事無く天井を見続けた。