第3章 雪解け
香苗が立ち上がった。
椅子が派手な音を立てて揺れる。
「男って愛してるから抱くの?愛してないから抱けるの?」
香苗の顔が怒りで歪んだ。
「あんた達が本当に愛してるのは、あたしじゃなくて自分自身でしょう!?」
耳を塞ぎたかった。逃げ出したかった。
「本当はあたしの事なんて、オナホとかダッチワイフとか、24時間いつでも股を開いてくれるコンビニみたいな、都合のいい女としか思ってないくせに!」
それでも啓太は逃げずに香苗と目線を合わせた。
「寂しそうにあたしに救いを求めて来るあんた達が、悪い事したってあんた達自身を責めたら可哀想だから、こっちは文句1つ言わずに黙って抱かれてやってるんだよ!」
香苗が机を力の限り叩く。
上に乗っていた筆記用具がいくつか落ちた。
「愛なんて言い訳して善人ぶって迫られるのはもうたくさん!」
筆記用具が床にぶつかる酷い音が香苗の声でかき消される。
「もうあたしの事は放っといてよ!」
転がったペンが動きを止めた。