第2章 極寒
「ストーカーに拒否しても聞いてもらえなかった事は分かってます。」
まだ香苗さんはこっちを向かない。
「元彼さんが好きだったとか、ストーカーに抱かれてしまった罪悪感とか、そういうのも分かってるつもりです。」
香苗さんが腕を組み直した。
「自分の主張を全部否定されて、もう何を言ってもダメなんだって思ってしまうのも仕方ない事だと思います。」
また足が動いた。
「でもそれで、香苗さんは相手とぶつかる事を最初から全部諦めた。」
頭が下を向いた。
「相手を理解するとか自分を理解してもらうのは、すごく難しくて面倒だから。」
椅子が少し揺れた。
「相手と分かり合うことから逃げたんだ。」
香苗さんの手が顔を覆う。
「泣いて逃げないでください!」
香苗さんの椅子を回して俺の方に向かせた。
「ちゃんと自分の気持ちを言ってください!俺を傷付けてもいいから!全部受け止めますから!」
香苗さんの顔を覆う手もどけた。
ぐちゃぐちゃだった。
そんなのどうでもよかった。
「俺、香苗さんの事が好きだから、香苗さんの事ちゃんと知りたい!」