第1章 冬
「研究室の先輩ですって。香苗さんと同期。」
「その情報はちょっと聞きたく無かった。」
啓太はまた笑い声をあげる。
「誰だか聞きます?」
「やめて聞きたく無い。」
聞かなくても研究室が分かってしまうとあの5人に絞られるから複雑な気分。香苗はちょっぴりため息をついた。
彼女も彼女だ。相手が誰とか聞かれても喋るなよ。
啓太と香苗の目線が交差する。
「その先輩、俺はよく知らないんですけど、優しくて面倒見が良くてイケメンなんですって。」
啓太は腕にすっぽり顔を埋めて表情を隠した。
「そりゃあ毎日会ってたらそっちを好きになるに決まってますよねー。」
声は割と明るい調子だった。