第1章 冬
扉に貼られた三角形の黄色いマークが、ここには限られた人間しか立ち入れない事を示している。
中にはいくつもの大きな機械が所狭しと並んでいるようだ。
いくつか鈍い稼働音を鳴らし、緑や赤の小さなランプを光らせる。
1つ、ガーッと大きな音を鳴らして帯状の細い紙を吐き出した。
数字の羅列。小刻みに揺れる折れ線。
人間味の無いその紙は、外の気温と同じぐらい冷たい結果を啓太に突きつけていた。
「くっそ・・・何でだぁ?」
部屋に誰もいないのをいい事に遠慮なく弱音を漏らす。
啓太は頭を抱えて、そんなはずは無いと改めて紙を見つめ直した。
卒業がかかっている研究論文。その進捗状況は芳しく無かった。
こうして休日返上ならびに睡眠返上で研究室に詰め込んでも、進むのは目の隈の酷さばかり。
「どうして!上手くいかないんだよ!」
紙を丸めて自身のパソコンに投げつける。
数回バウンドして、紙の塊は机の端にひっそり身を寄せた。