rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第33章 fondness after (side Nash)
夢は見なかった。
別に見る必要もないほどに、今は幸せを噛み締めて朝を迎えられていたと思う。
まあ、正直夢でも会うことが出来れば完璧だったのかもしれないけれど。
「ん・・・、――・・?」
心地好い重みは腕から消えている。
明るみのある長い睫毛がゆっくりと動き、ナッシュは目を覚ました。
くしゅくしゅと枕が擦れた音を上げながら、彼が頭を横に傾けて初めて気付いたのは、夜じゅう自ら伸ばしていたその腕に名無しが居なかったことだった。
「――・・・名無し・・?」
朝を迎えて、もしもこの状況が逆転していれば、恐らくは名無しの場合は起きて早々に慌てふためいていたことだろう。
想像すると少し笑えて、ナッシュはやんわりと口角を上向ける。
自分は目を覚まして名無しが居なくても、動じることはおそらくなかった。
「・・・ハァ・・」
ただ、一寸の寂しさを感じてしまったことは否めずにいた。