rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第26章 rain of fondnessⅩ
「ナッシュ・・・」
「オレも同じだ・・こんな・・・、ん・・」
「!・・ん・・・ッ・・」
「ハァ・・・名無し・・――」
「ッ・・・、そうだよ・・もう、ずっと私・・・。とっくに・・・ナッシュが――」
何度でも惚れさせられる。
心を奪われる。
ナッシュの言動や仕草ひとつひとつにいちいち胸を擽られ、名無しは自身にも再び、身体の奥に火を灯された気がした。
宿った熱が顕著になってゆくのが分かったのは、唇が離れ、互いの鼻先がツンと触れ合って、ただ名前を呼ばれるだけのそれがどうしようもなく嬉しいと感じたから。
恥ずかしがってこの場から逃れられないことに焦るよりも、嘆くよりも。
優先すべきはもっとあるだろうと、自ずと諭された。
「ナッシュ・・・ッ」
こんな状況でも「好き」とは言えなかったし、きっと言われることもない・・・。
けれど同等の価値の言葉を、行動を、ナッシュに示し示される術を、名無しはもう憶えていた。