rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第16章 rain of fondnessⅥ
激しく抱き合っているときに聞こえるのは、相手の感じている甘い声だけでいい。
耳と脳が自然と不要に思っていた、肌がやたらとシーツに擦れる音がやけに恋しくなったのは、セックスに溺れ浸っていた余韻が霞んだ証拠だろう。
頭の中で満開になっていた大輪がいい意味で散り、性的な感情だけに支配されていた心と身体がまともになった瞬間のこと。
「・・・・――」
名無しのうっとりとしていた瞳にはキリッとした色が滲む。
同時に急いていた彼女の息は、一瞬だけナッシュによって吸いやすくさせられていた。
「はぁ・・・あ・・、・・・ナ・・!んん・・・」
「ん・・・、ん・・」
「――・・・ッ・・」
ほんの少し前、自身の陰部からナッシュが出ていった感触があった。
キスをし続けていたことでまともに話せなかったという理由もあったけれど、名無しはこのとき、抜かないでとも、抜いてと懇願することも彼にはしなかった。
それは単純に、本当に身体に限界を感じていたのがまずひとつ。
そしてもうひとつは、赴くまま、ただずっと唇を重ねていたかったからだ。
「ふ、・・・ん・・」
膣から体積が消えたとき、臀部に向け、ナッシュの精液が零れてゆく憶えもあった。
そんな状況で、ふいに名無しの頭の片隅に舞い降りたのはどうしてか、初めて身体を組み伏せられたときのことだった。