第4章 二振目 へし切長谷部②※R18
長谷部が去った後、ひゅうがはしばらく天井を見ながら考えごとをしていた。
出来ればこのまま眠ってしまいたい。
だが、ひゅうがはどうしても確かめておきたいことがあった。
「もしかしたら……」
ひゅうがは身体を起こすと、鏡台に行き、鏡を覗き込む。
見慣れた自分の顔、額にはガーゼが当てられており、少しだけ血が滲んでいた。
ひゅうがはガーゼに手をかけると、恐る恐るガーゼを外す。
「…………」
ガーゼを外し、前髪を手で搔き上げるが、そこには何もない。
額には傷どころが、傷跡すらもなかった。
「さすが化け物、疲れてても傷を治すのは早いんだね……」
ひゅうがは自嘲気味に笑うが、同時に涙が頬を伝う。
些細な傷なら即座に治ってしまう、忌まわしい身体。
ひゅうがはこの力を忌み嫌っていた。
傷が治る様を見るたび、自分が人ではなく、人の皮を被った化け物のように思えてならないのだ。
「神のそれに等しい力……か、」
昔、ひゅうがの妹がそう言っていた。
自分とひゅうがの力は、神の持つ力に等しいと。
神聖な力なのだから、化け物のようだとは思わない。
だが、そう言って慰めてくれた妹は、今はいない。
「誰か……」
ひゅうがは布団に横になると、身体を丸める。
一人になりたくない。
そう強く思いながら、ひゅうがは深い眠りへと落ちていった。