第15章 情欲と理性の間で 一期一振※執筆中
一期一振の元へ行かない理由を考えたが、全く思いつかないまま、部屋についてしまった。
ひゅうががため息をつくと、障子越しに声を掛ける。
「一期一振、いる?」
いませんように、会えませんように。
そう願いながら声を掛けたお陰か、室内からは何の返答もない。
もしくは、怒りのあまり返事すらないからか。
「一期一振……?開けますよ?」
一応中を確認しておこうと、ゆっくりと障子を開ける。
「……あれ?」
室内を覗くと、やはりいない。
それどころか刀もなく、卓上に一期一振の内番着が畳まれて置いてあった。
「まさか……、あっ!?」
ひゅうがは何かを思い出し、記憶を探る。
顕現の間の続き部屋に一期一振が来た時、彼は内番着ではなかった。
そうだ、一期一振は遠征のメンバーだった。
短刀達を中心に隊を組み、そのお目付用に一期一振を加えて江戸へ遠征に行っている。
「すっかり忘れてた」
だが、遠征先は江戸。
大した時間もかからない場所だから、じきに戻るだろう。
仕方なく、ひゅうがは部屋の中で待たせてもらうことにした。
ひゅうがは部屋に入ると、障子を閉める。
「……さて、何して待とうか」
ひゅうがが座ると、卓に頬杖を着く。
時間を潰せるようなものはなにも無く、ひゅうがは卓上にある一期一振の内番着をぼんやりと見ていた。
「…………」
自室に行けば、幾らでも時間を潰せる。
新しく手に入れた書物、政府から届いた資料、こんのすけと作戦会議。
やることは沢山ある。
ひゅうがは何か考えては、また次のことを考えているうちに、瞼が重くなってきていた。
「……ねむい」
頬杖をついていた腕がガクッとなり、ひゅうがは卓上にある内番着に手を伸ばした。
「ちょっとお借りします」
ひゅうがは一期一振の内番着を手に取ると、それを枕にした。
申し訳ない気持ちもあったが、そもそも遠征に行くのに、話があると言った一期一振が悪いのだ。
ひゅうがは深く呼吸をすると、日頃眠りが少ないせいか、呆気なく眠りについてしまった。