第13章 近侍であるために 加州清光
「それじゃあ、ここで待っていてね」
この先の部屋には刀鍛冶が鍛刀した刀が納められている。
加州もかつてはその部屋にいた。
主が来るのを待ち、主に選ばれ、主から人の姿を賜わる部屋。
お互いの名を明かし、主に仕えることを誓う特別な部屋だ。
刀にとって特別な部屋故に、加州はついては行けない。
部屋の外で事が終わるのを待つしか出来ないのだ。
「気を付けてね、主」
廊下を一人で進み、その先にある部屋へと行くひゅうが。
加州はその後ろ姿を悲しげな表情で見つめる。
何度見ても、この時は胸が苦しくなる。
誰が顕現するのか。
今度こそ、大和守安定が来るかもしれない。
だが、加州より強くひゅうがが惹かれるような刀が来るかもしれない。
もしかしたら、近侍でなくなるかもしれない。
そんな期待と恐れが入り混じる。
自分にもっと自信があればいいのに。
加州は心の弱さが情けなくなる。
「……もっと強くならないとな」
ひゅうがの近侍であり続けるために。
加州はひたすら、強さを乞い願う。