第12章 面影
現に、ひゅうがは加州清光を始め、刀剣男士達との関わりの中で確実に良い方向に向かっている。
笑顔も見せるようにもなり、何より一番忌み嫌っていたひゅうが自身の力を受け入れるようになっているのだ。
ひゅうがに全て話さなかったのは、間違ってはいない。
こんのすけはそう自分に言い聞かせていた。
「ひゅうが様、私にだって考え事の一つや二つありますよ」
「そうなんだ。まぁ、ゆっくり考え事してて。私はちょっと行ってくるよ」
ひゅうがは書類を卓上に置くと、立ち上がる。
着ていた緋袴を手で払うと、執務室を後にしようと障子に手をかけた。
「ひゅうが様、どちらに?」
「刀鍛冶のところ。新たに何振りか顕現してくる。今は違う視点が欲しいから、顕現次第、加州と部隊を組んで遠征に行ってもらう」
加州清光以外の刀剣男士を顕現するのを渋った時期が嘘のようだ。
今では、新たな刀が鍛刀されれば日を長く開けずに顕現している。
「わかりました。いってらっしゃいませ」
「私には、やるべきことがある。……ちゃんとわかっているよ」
ひゅうがが思うやるべきことは、こんのすけが思うものとは違っているのだろう。
どうか、ひゅうがの進む道が明るいものであってほしい。
こんのすけはひゅうがの背中を見送ると、障子をぱたりと閉めた。