第11章 たきしめる 歌仙兼定※R18
「僕らが刀だった頃は、主に振るわれるのを待つだけの存在だった。だけど……僕たちはもう、待つだけの刀じゃない。そうだろう?」
歌仙は一期一振を焚き付けるような問いを投げかけると、彼の返事を待たずに部屋を後にした。
厨へと向かう歌仙の表情は実に楽しげであった。
「これでまた一振、主を恋い慕う刀が増えるかな」
歌仙が中庭に目をやると、桔梗の花がいくつも咲いていた。
美しい薄紫色に咲く花を見て、歌仙は立ち止まる。
「…………」
ひゅうが、僕はね、君が花開くを楽しみにしているんだ。
女性は男を知る度に美しく、艶やかになる。
無垢な少女のようなひゅうがが、妖艶さを纏う女性になっていく様を見たいのさ。
君が淫靡に咲き乱れたら、今よりもっと愛してあげるよ。
「さて、今日は誰か顕現するのかな」
次は、誰が君を恋い慕うようになるだろう。
恋敵が何人増えようが、僕は気にはならないけどね。