第10章 崩れる不幸
「先輩は謝ってことを済ますつもりなんですか?」
私がそういうと先輩は足をとめた。
「謝ってもらったところで、私たちの傷は癒えませんよね?もちろん先輩の傷も。」
そういうと先輩は再び席に座った。
「望みは何、お金?」
そう先輩が聞くので私は
「いえ。そんなものは求めていません」
と言った。
私が望むものはもちろん、湊の悪い噂を掻き消すことだ。
「これは、一種の取引です。」
私はそういうと深呼吸をしてからこういった。
「先輩の好きな人の誤解を解くので、私の好きな人の悪い噂、掻き消してください。あんなことをした先輩に断る権利ありませんよね?」
みれば脅しに見えるだろう。
けれどこれは先輩には一切損はないのだ。
もちろん、私にも損はない。
それに、その人は話に寄れば私の中学一年の時の三年の先輩だ。
面識がないわけではなさそう。
だから連絡先さえわかればわかりにくい話ではないのだ。
誤解がとけたとしても、それから先は先輩たち次第。
けれど、誤解が解けるだけで大きな壁は消える。
先輩からすればおいしい状況だ。
私が先輩を見ていると、
「わかった。本当にそれだけで良いの?」
「はい。むしろそれが私の1番の願いです。」
私がそう会話を交わすと先輩は最後に言った。
「もう直属の先輩でもないんだし、先輩呼びなんて仰々しい呼び方やめて。由利でいいよ。」
と言った。
「わかりました、由利さん。」
私たちはそんな会話を交わし、二人で喫茶店を出た。
いままでは嫌な感じの先輩に見えた。
確かに私たちにも及ぼしたことはひどいことだが、先輩も考えがあって行動してたんだと思うと、どこかせめられなかった。
そして今日話したことですこし、仲良くなれた気がした。
私はそのあと、先輩こと由利さんからあの人の連絡先を教えてもらい、家へと帰った。