第10章 崩れる不幸
「ところでこのあとは空いてるか?空いてるなら仕切り直してどっかいこうぜ。」
数日の不機嫌さはなくなり、いつも通りの湊が戻ってきた。
私はそれを見ているだけですごく、安心できた。
「うん。行くとこは湊におまかせする」
私はそう返す。
自然と手を繋いでいるのが分かった。
そんな一つ一つの行動さえもに、安心感を覚える。
無言ながらにも、その瞬間に幸せを感じた。
私たちはその幸せを抱えて、公園を後にした。
黙々と歩き、その先には駅が見えてきた。
切符を買って電車をホームで待っていたときのこと。
例の先輩の姿がさらりと見えた。
私が見えたときは男の人と手を繋いでいたがすこし険悪そうだった。
私は気になりその方向を見る。
そこには泣き崩れ、男の人を腕を掴み引き止めようとする先輩の姿があった。
男の人はその手を振り払い、その勢いで先輩はこけてしまう。
その先輩には立ち上がる力も無かった。
私は思わず湊の手を離し、先輩の方へと歩きはじめた。
「おい」
湊がそう私をとめる。
なので私は「すこし待ってて。」そういって再び歩きはじめた。
なんでそうしたのかはわからない。
けれどそうしなきゃいけない気がした。
「大丈夫、ですか?」
私はそういって手を指し述べる。
「...自分で立てる。先輩にそんな上から目線しないで」
そう、先輩は言うが腰が抜けていて全然力が入っていない。
「立ててないじゃないですか。」
私は手を再び指し述べた。
するとすこし歯を食いしばりながらも私の手をとり再び立ち上がった。
「江城のくせに...でも、ありがと」
そういう先輩に私は
「私の名前、覚えてたんですね。ところで、後日お話したいことがあります。これ、メアドなんで後で連絡ください。」
そういってかばんの中の適当な紙に適当なペンでサラサラとメアドを書き、先輩に手渡した。
そのあと、私は再び湊の元へと戻った。