第9章 波風
距離を置いて一ヶ月。
私たちは今日、答を出さなきゃいけない。
そして雛斗くんは明後日、日本を旅立つ。
いろんなことが重なり私の心は困惑していた。
結局、私は湊と共にこれからも困難に立ち向かっていきたいと思った。
けれど湊はどう思っているのかはわからない。
もしかしたら別れたいと思ってるかもしれないし、気持ちは変わっていないかもしれない。
もしかしたら他に好きな子ができたかも知れない。
私は今日、湊から「今日、放課後デートしませんか」と他人行儀になっているメールにたいして「わかった。校門前で待ち合わせで。」と返した。
何となく、このメールが来た理由は察している。
あの答を出す場を設けてくれたのだろう。
私が楽しみな半面、不安を抱えいろいろとそわそわしながら学校の廊下を歩いていると思わぬ話が耳に入ってきた。
「白野くんって実は双子だったらしいよー。」
「え?そうなの?兄弟いたんだ。もう一人の人は?」
「亡くなったんだって。あんまり仲も良くなかったみたいだよ、一説では白野くんが追い詰めて自殺したんじゃないかって話」
そんな話はない。
あれはただの[事故]
それに、湊が双子だったと知っているのは一部の人間だ。
同じ中学だった人もそこまでうちの学校にはいない。
よってうちの学校でそのことを知っているのは湊の友人のごく一部と、私、それから雛斗くんぐらいだと思う。
けれど湊の友人は口が堅く、そんなことを話すような人間はいない。
いたとしたら湊は仲良くしていないはずだ。
ならなんで。
不思議に思い、私は彼女たちをすこしだけ追った。
ばれないように話を聞いていると、彼女たちは再び話しはじめる。
「その話ってどこ情報?」
「うちの部の先輩が行ってた。去年卒業した人だけど。」
そういわれたときある人の顔が頭に浮かんだ。
湊がデートしていた先輩以外心当たりはない。
もしかしてとは思ったが、私は連絡先も知らない。
でも何か行動しなきゃ。
そう考えながら私は教室へと戻った。