第9章 波風
「七華~、お客さんよ。」
母が自室の部屋の前でそう言っていた。
「はーい。部屋まで通していいよ。」
対した人は来ないだろう、そう思って私は部屋まで通すよういった。
けれど、扉を開ければ私が今一番会いたくない人物がいた。
「...七華。話したいことがある。いいか?」
そこには少し息を切らしている湊がいた。
「どうぞ。」
何が言いたいかは何となく察したし、今のタイミングを逃せばまともに話す機会がなくなる気がしたので私は部屋に湊を通した。
私は湊を部屋に通したあと、机の上に積んであった攻略中のゲームを片付けた。
ある程度、片付けてから湊の机を挟んで正面に座る。
「話したいことって、駅前で会った時のことだよね?」
話は私から切り出した。
あれ以外、心当たりはない。
すると湊は私にすごく辛そうに話を始めた。
「これから話すことは言い訳に聞こえてしまうかもしれない。もし嫌だったら途中で止めてくれて構わない。」
そう私に一言言ってから話を始めた。
「七華に俺が原因で、重度の嫌がらせが続いて正直俺も戸惑ってたしどうしたらいいかわからなかった。仕込んでる犯人には心当たりがあったけど、聞く勇気が俺にはなかった。けど七華が閉じ込められた日、思ったんだ。犯人かはわからないけどこのまま置いておくことはできないって。だからその人に連絡を取った。」
湊は私の目を見てずっと話していた。
本当なら、いくら自分の行動が原因だといえど目を見て話すことはできないと思う。
恐怖心、下心、気まずさ。
いろいろあるだろう。
本当はこんなまともに話を聞くつもりはなかった。
けれど本当のことを言おうというかれなりの覚悟が見られた。
だから、私もこのことにしっかりと向き合おう、そう思った。