第9章 波風
湊Side
「いってぇな。」
雛は自分の言いたいことだけいうと俺の部屋をさっさとさっていった。
打たれたけど打たれたことに対して何の仕返しもできなかった。
図星だったからだ。
あいつの言っていることはごもっともで、あいつの立場からすれば俺は都合のいいことをしていただけなのかも知れない。
我に帰った瞬間だった。
人に任せるんじゃなくて自分で守らなきゃいけないんだ。
そう自分にいい聞かせた。
あいつもパリに行くって言ってたしあいつはあいつで成長しようとしているのだろう。
あいつより年上なのにあいつに教えられてどうする。
それはそう思うと咄嗟に携帯片手に家を出た。
あるところに連絡だけ入れて俺は駅前で待つ。
しばらく待っているとそこには俺の連絡した相手がやってきた。
「湊くん。返事、決まったの?」
先輩だ。
「はい。」
「答、聞かせてくれる?」
「はっきり言います、NOです。」
俺は余裕そうな先輩の目を見ていった。
これ以外、答はない。
「なっ、いいの、状態が悪化しても。」
先輩に余裕がなくなる。
「はい、いいです。どれだけ嫌がらせしようともこの手で守ります。それにこんな聞き分けの悪いやつにもう興味はないですよね?」
今まで気を使って言えなかったことをいった。
前は同じ建物で学ぶ先輩だったが今は違う。
顔を合わせることもそんなにない。
だからいい。
「自分の立場、わかってるの?悪い噂、流れても知らないよ。」
先輩は目を座らせて言う。
「いいです、流したいなら流してください。俺はそれに立ち向かって見せます。」
もう離さないって決めたから。
それを七華と雛が気づかせてくれた。
だからこれが最後だ。
俺は心にそう誓って先輩に背中を向け再び歩きはじめた。