第8章 環境変化
雛斗くんはおそらく、前を向いて歩こうとしている。
だからあんな声かけが私にできるんだと思う。
少しだけ、気持ちが楽になった。
そのあと、私は少しだけ息を吸って言う。
「心配してくれてありがとう。」
素直に感謝の気持ちを言いたかった。
だからそれを言葉にして伝えられたことが嬉しかった。
「ところで湊は?俺と一緒なら睨みつけたり、ついて来たりしそうなのに。」
雛斗くんは周りを見回す。
私は「湊なら眼科行くって早引きしたよ?」と言った。
すると雛斗くんは大きくため息をついて、
「こんな時に眼科かよ。朝サラっと見たときは目に異常なんてなさそうだったけど?」
少し困った顔で私にそういう。
「検査?だって。視力落ちたしカラコンも入れたいからって。」
私がそういうと雛斗くんは、教室の扉に手をかけた。
そして教室を出る前に
「ま、昼ご飯食べる相手がいないときとか困った時とか今度から呼んでくれていいから。前あったことはもう解決したってことで。それじゃ」
といった。
以外と根に持たないこなんだなと思った。
あのことを伝えるだけのために、私に何か危害がないかを確認するために、私にわざわざ聞きに来てくれたことにびっくりした。
私が気付かなかっただけで、彼はかなり心配性なのかもしれない。
周りに自分の心配をしてくれる人がいると言うことがどれだけありがたいことなのかを痛感した。
私は雛斗くんの空けていた窓を閉めて教室を出る。
自分のクラスまでの間何となく寂しかった。
別に湊がいなくなってしまったわけではない。
今日、たまたまいないだけ。
けれど、私をおいてどこかへ行ってしまうんじゃないかと思った。
この時はまだこんなことを考えられていた。
このあと、私には悲劇が起こった。