第6章 外れた道を戻すために。
「あぁ、いいよ。俺に任せろ」
湊は嬉しそうに私にいった。
あのノートが無ければ私たちは一緒になることは無かったかも知れない。
雛斗くんに私が脅されなければ今の幸せはないかもしれない。
私は周りの人間に対して、困難はあったけれど、感謝した。
時には自分たちに障害物になっていたものが、手助けになることもあるのだなと。
私がぼーっとしていると湊は私にふいにいった。
「兄貴、お前が自分のこと好きじゃないことに気づいてたの知ってたか?」
私はそんな事実は知らない。
私は思わず「え?」と言ってしまう。
「日記に書いてあった。七華は読んでないのか?」
と少し不思議そうに湊が言うのを見て、記憶を手繰り寄せる。
確かに、ノートは見た。
けれど、全部が全部見た訳ではない。
し、なんならぱらぱらとしか見ていない。
逢人、気づいてたんだ。
多分、いつもの逢人なら別れようっていってた。
けど、別れなかったのは生前の逢人のたった一つのわがままだったのかもしれない。
昔から察しのいい人だったから、気づいていたのにも納得がいく。
私は「そう、だったんだ。」とぽつり、呟いた。
その横で湊は「兄貴らしくねぇよな。」と言うが、私にはわかる。
たまには彼だってわがまま言いたかったんだって。
少し甘えてくれてたんだと思う。
私は彼には彼の求めていた好きで彼の好きを返すことはできなかった。
けれど、彼のわがままに少しだけでも付き合えていたことが自分の気持ちを楽にした。
ありがとう、逢人。
そんなことを心のそこで思った。
そのあと私は湊にさらりと小さなメモ渡された。
「雛から渡せって言われた。」
少し不機嫌そうな湊。
そのメモは二つに折り畳まれていて、そこには
[別れたこと後悔させてあげるから。後悔させられないくらい幸せになりなよ 雛斗]
そう書いてあるメモを見て私はやはりいとこといえど同じ血を引いているのだろう、少し不器用なところがどことなく湊に似てるなと思った。