第6章 外れた道を戻すために。
私は「なんでそんなこと言えるの?」という。
湊らしい答といえば答だ。
けれど、自分の実のまして兄や双子の兄が私の気づいてなかった無意識といえど、嘘をつかれていたようなものなのだ。
なのに何故そんなことが言えるのだろうか。
疑問に思っていると「兄貴だったらそういうから、だな。お前もわかってるだろ、兄貴は絵に書いたようないい人だってこと。」と少し自慢げに湊はいった。
逢人なら確かにそういいそうだ。
私は重い口をあげた。
「あの日、あのあと雛斗くんにキスされそうになった。」
私はそういうと俯きながら湊は話を聞いている。
「けどね、できなかった。寸前で手が目の前に出た。」
そう私がいえば何か納得言ったような表情を湊はした。
私は意を決して、
「私ね、多分逢人と付き合う前から湊が好きだったんだよ。けど逢人が亡くなる手前まで自覚は無かった。」
という。
ずっと言えなくて辛かった。
その数年、隠しつづけた事実を言わなかったのが辛かった。
湊が他の女の子と二人でいたとき、心のどこかでいいなって思ってた自分がいた。
湊に好きって言われたとき本当はそれに対して好きって答えたかった。
けれど、答えられなかった。
それを私は罪滅ぼしだって言い訳してた。
けど、実際罪悪感に駆られるのが嫌なだけだったんだ、ビビってただけなんだ。
それを言えたとき、私には一粒の涙がこぼれた。
すると湊は私の隣にきて、私の頬に伝った涙を手で拭ってくれた。
「お前に涙は似合わないよ」
そういいながらも少し目が潤んでいる湊。
それを見て私は
「あんたも泣きそうになってんじゃん、バーカ」
なんて返す。
「七華が幸せになることが、兄貴の願いだ。きっと、いなくなった自分に囚われてうまく行動できない七華のこと、天国から見てても兄貴は喜ばないよ」
なんて、湊はいう。
私はそれに対して、
「じゃあ、私のこと幸せしてよ、湊。」
といった。