第6章 外れた道を戻すために。
部屋の外からガヤガヤと音がする。
部屋の外というか、ベランダから。
まさかと思いながらもカーテンを少しめくり、外を見る。
するとそこには制服でジャケットだけ脱いだ、腕まくりをしている湊がいた。
外は少し小雨が降っていて、湊は少し濡れていた。
「何やってんの、どうやってベランダまで入ったの。」
私は冷たく、そういった。
本当はもう少し優しく言いたい。
けれど、言えなかった。
「ごめん、梯使った。どうしても話したいことがある。少しいいか」
真剣そうに湊は言う。
私は「.....わかった。雨降ってるし、中入って。」といい、湊を部屋に招き入れた。
私が部屋の隅に座って、背中を壁に預ける。
そのあと「適当に座って」と私が言うと湊は私から少し離れたところに座った。
湊はすごく言いにくそうにいった。
「あの日は本当に悪かった。ごめん。俺もあの時は少し動揺してた。あの日雛の荷物詰めるの手伝ってたら兄貴の日記、見つけたんだ。本当は見るつもりなんてなかった。けど本当、興味本意だったんだ。けどそれ見たら俺の知らなかったことがたくさん書いてあった。」
湊はすごく、辛そうだった。
だって、私たちは知っていたことをただ一人知らなかったのだから。
内心、あ、終わったなって思った。
湊に嫌われたかなって。
私は湊と一緒にいるだけでよかった。
逢人への罪悪感で付き合ったりすることはもうないなって思った。
だから、せめて好きな人の側にいられるだけでよかった。
幸せだった。
湊は続けて私に話す。
「七華が雛から日記に書いてある内容見て脅されてたってことも聞いた。それでここからは俺のただの想像だ。違ったら違うっていってほしい。」
湊の言うことに少しひっかかった。
なにか他に思うことがあるのだろうか。
湊は
「兄貴のことで罪悪感があって人に好きって伝えられてないんじゃないか?」
図星だ。
そのあと彼は
「そう思ってるなら兄貴のためにも幸せになれ」
と私にいった。