第2章 過去とコンプレックス
「湊!?」私はそういう。
なんせ急に恋愛感情も何もない人間に抱きしめられたのだからびっくりする。
すると湊は「別にいいだろ。」という。
私は「なんで、急にこんなことするの」といった。
湊は「別に何でもいいだろ。お前から見れば俺はただの幼なじみで元カレの弟なんだろ。男としては見てない。」そういって私を離さなかった。
顔は見えないが声色でわかる。すごく冷静なことに。
けれど私は必死にもがいた。
けれど離そうとしない。
私は「離して」そうおとなしく言った。
「お前は兄貴が亡くなった今でも兄貴が好きなんだろ。けど、もういない。なら顔がほとんど変わらない俺と付き合えばいいんじゃないのか」と湊は言った。
信じられなかった。
彼からそんな言葉が出るなんて思いもしなかった。
私は感情的になってしまい思い切り湊の頬を叩いた。
そして「そんな簡単な物じゃない。あんたがそこまで感情のない人間だなんて思わなかった。」そういって財布だけ持って、部屋から走って家を出た。
出る前母に「どうしたの」といわれた気がしたが無視してしまった。
私はそのあと駅前のバス停に行って、とある場所へ向かうバスへと乗った。
昨日の私服のままでお風呂も入ってなかったがいつもなら気になるのに気にならなかった。
2時間ほどバスに揺られて、私は少し山に近い田舎についた。
私たちが住んでいるところとは全然違う場所。
そこには、私の英雄の彼が眠っている。
私はとっさに履いて来てしまったなれないパンプスでどろどろの山道を少しだけのぼった。
いつも履いていない靴で走ったりなれないところを歩いたりしているせいか足が靴ズレでボロボロだった。
けどその痛みも感じなかった。
やがて、墓地へと着く。
線香も何も持たず来たので手を合わせる事しかできないが、お墓の前に佇み、手を合わせ、そこで眠っている逢人へと心の中で話しかけた。
「ねぇ、逢人。私どうしたらいいのかな」