第10章 崩れる不幸
「...そう、だったんだ。君は確かにあいつと付き合ってたし辛かったよね。」
先輩は委員会で逢人と面識があった。そのため付き合っていたことを知っていたようだった。
「先輩、私は好きと言われたとき空気に流されて付き合ってしまったんです。他には好きな人いないしって思って彼と付き合いました。けど私は後々になって他の人に好きな人がいたってことに気づいたんです。けどそれを言う勇気がなくて気づいたらこんなことになってました。」
私の失敗したことを他の人にもしてほしくなかった。
自分の気持ちには素直に。
それが逢人が最後に教えてくれたことだから。
「一度向き合うことって大切だと、私は思うんです。」
私はまっすぐ先輩を見つめる。
「俺ももう少し男らしさ見せないといけないかもしんないね。女の子にこんなカッコイイこと言われて論破されてるようじゃ、まだまだだな。」
神藤先輩はすこしまゆをひそめて苦笑いで言う。
そのあとすこしだけ、俯いたあと前を見て私にいった。
「俺が由利のこと好きだったって聞いたら引くかな。」
目を見ていているだけで本気でそれを言っていることがわかった。
「なら答えてあげればいいじゃないですか。」
まっすぐ目を見て言えば、
「俺は、いくら自分のためにしてくれたことだって分かってても人を蹴落としたりするのが好きではないんだよ。実力ではい上がっていきたい主義でね。」
と神藤先輩は言う。
私は彼のことを噂話などでしかしらない。
けれど悪い噂が流れてきたことがない、ということだけは断言して言えた。
「けどさ、今の聞いて思ったんだよ。本当に好きな人間に尽くされるとそれがどれだけダメなことでも、悪だったとしても悪い気分がしないんだって。だから俺もけじめをつけないといけないかもしれないな。」
そういう神藤先輩の目には真剣さが宿っていた。
「俺は引っ越してやりたいこと見つけて、会社起業して、それまでの間辛かったけどすごく充実した日々を送ってたけどその間、自分の好きな女の時間をとめてるようじゃだめだな。よし。」
神藤先輩は立ち上がる。
「勝手だとは思うけど、由利と話つけて来るよ。ここの会計は俺が払っておくからゆっくりしてって。それじゃ」