第10章 崩れる不幸
私はメニューをパラパラと開いて結局、オススメされたベリーパンケーキにすることにした。
神藤先輩は、新作だという巨峰のパフェにするという。
私たちは手短に注文を済ませると、先輩は私にこう話をふった。
「なんで今までろくに話したこともない俺に急に話がしたいっていったの?」
そういわれて私は息をのむ。
そりゃそうだ。
面識がすこしあるくらいの二個も年下の後輩に突然話があるだなんて言われたら何か不思議に思うのは当たり前。
ましてやもう卒業して何年も経つのに不思議に思わないはずがない。
「...お話したいのは由利さんのことです。」
私はそういったとき、彼の顔を見ることができなかった。
すると私を見て神藤先輩は
「...由利がどうしたの。話は噂話で入ってきたよ。君と白野たちに嫌がさせしてたみたいだね。」
そう先輩は声のトーンを落として言う。
私は意を決していった。
「私たちに由利さんがしたことは決して許されることではないと思います。けどあの行動には理由があるんです。」
こんなこと言っても、私の力じゃどうにもできないかもしれない。けれどそれでもすこしでも力になれるなら自分も力になりたかった。
彼女は好きな人に全力を注ぐ余りに人に迷惑をかけてしまったのだ。
「理由があったってどんな理由だろうなって俺は思うよ。人は確かに過ちを起こすことがあるかもしれない。けれどそれでもやっていいこと、悪いことがあるよね。」
そう言う、神藤先輩を見て私はますますこの先が不安になった。
「その理由、聞いてくれませんか。」
私は今度こそはと彼の目を見ていった。
「そんな目で見つめられて断れる男はいないよ。どうぞ。話してみて。」
そう、優しい眼差しで神藤先輩は返してくれた。