第10章 崩れる不幸
由利さんと会ってから数日が立つ。
今日は私はすべてのことに決着をつけようと思っている。
そしてそれの第一歩を踏み出すためある人と待ち合わせをしていた。
「こんにちは。江城ちゃん。」
その人は私にそう声をかけた。
「あ、神藤先輩。私のこと、覚えてたんですね。」
あの人は神藤 隼先輩。
中学の時の先輩だ。
といっても由利さんほどではなく、二個年上。
そして私は彼とは殆ど挨拶しか交わしたことがない。
「忘れるわけないよ。だって、掃除の時間俺と同じ場所でサボってたじゃん?あの場所知ってるの俺と君くらいだからね。」
そう神藤先輩は笑いながらいった。
神藤先輩と私は会話は交わしたことはなかったが、面識だけはあった。
といっても一緒の部屋にいた、とかそうゆうわけではない。
学校の中庭の植木などがあるところにすこし人が何人か座れば見えなくなるくらいの影があった。
掃除が嫌いだった私は入学直後、その場所を見つけそこに掃除の時間だけ行っていた。
そこにいた先客が、神藤先輩だ。
といっても私たちは自己紹介等は互いにしていない。
名札を互いに一方的に見て覚えていただけだ。
「先輩と初めてあそこで会った次の日、先輩が頭いいって聞いたときは驚きました。」
「え?それって俺が頭悪そうに見えたってこと?ははっ。正直だねー、君は。ところで俺に用事って何?ってか連絡先は誰から聞いたの?」
先輩からの疑問に私はすこしだけ答に迷って
「今日はちょっと話したいことがあるんです。連絡先は...白野に教えてもらいました。」
という。
一瞬、由利さんの名前を出そうかと思ったが、出すと険悪になりそうな気がしたので違う名前を出した。
すると神藤先輩は私に
「あー、白野の双子か。けど俺白野弟とは面識あんまりないし、兄貴の方か?」
と聞く。
多分神藤先輩は逢人がなくなったこと知らなかったんだと思う。
けれどこの真実は伝えがたい気がして言えなかった。