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短篇集

第6章 『由良の途を』②




勢い良く閉めた扉に
ズルズルともたれながら落ちていく


あああ…


何で俺

言い争ってんだよ!



こんなつもりじゃなかったのに

そんな事をいくつも犯して
冷たいアスファルトに膝まづく


本当は名前っちの部屋上がり込んで
棚とか物色しつつ
趣味の傾向とかそんなんを知れたらなとか
学校では出来ないお喋りとかしたいなとか

とにかく

皆んなが知らない

俺もまだ知らない彼女の姿を知りたかっただけなのに


なに余計なこと言ってんだろうかね…


何処と無く彼女に惹かれ

交わらない視線の一方通行がもどかしくて


嫌な顔された時の…

なんというか

こうさ


俺だけに見せる素顔ってのがさ


すんごく胸をくすぐって…




壁越しに聞こえる鼻歌も


ほのかに香る絵の具の匂いも


ああ…

これ知ってんの
俺だけなんだなって思うと


なんだか心が満たされて


気付いたら会話も交わしたことのない隣人に




俺は恋をしてたんだ






ズルズル這いずるように自室に戻り
へたり込むようにベッドに落ちる


「ああー…」


唸り声を枕に流し


明日のことを待ちわびる

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