第6章 『由良の途を』②
海常高校に入学をして一か月が経った
私は例の男、黄瀬君と
できるだけ目を合わさない様に、関わらない様にと努めた
それでも数回、合ってしまったこともある
その時も、やはりあの時と同じような瞳で…
話したこともない相手に、こんなにも嫌悪感を抱くのは初めてだ
『今年はクラス運が悪かったわ…』
そう焼きたてのトーストを口に含みながら零す
ガランとした部屋の天井を眺めながら
テレビのニュースを BGMにして
楽な呆け面で
パンを齧る
学校の制服に着替え、鏡の前で一応の確認をすればもう登校準備は完璧だ
いつもの様に鞄と
今日は燃えるゴミとを両手に携え、部屋の扉を開け放ち
一旦両手のモノを地面に置いて鍵をかける
二度確認するのが私の習慣だ
もう一度、さして重くないものたちを軽々と持ち上げ
扉近くの螺旋階段へと歩を進める
至って日常
なんら普段と変わらない
はずだった