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短篇集

第5章 『由良の途を』黄瀬涼太




そのあと
正気に戻った友達が言っていた
彼は人気のモデルなんだと
余計に納得がいった

だからあの騒がれようなのか

人気者は大変だな


モデルの黄瀬君とやらを
私は勝手にリスペクトする

サインとか貰ってたよね、皆

私も貰おうかな
あったら何かと自慢できそう

…こんな変な動機だと、ファンの子に失礼だなと思い
サインは貰わないことに決めた



ああいうのには関わらない方が得策だ


さして私は、あのモデルに興味がないのだから


面倒事は避けたいし、無理に関わる必要もない訳だからね



まぁ、折角同じクラスに成れたんだ
こんなイケメンはそうそう見られない
目の保養として見ておくのは良い事だ


などと、意外と私は
モデルという有名人がこんなにも側に居る事に興奮しているみたい

久々に、私というものを愉しめた



チラリと彼へと視線を流す








『…え』






思わず漏れた微かな声


それは視線の先に居た金髪の彼が原因だった



目が、合った



たまたまなんかじゃない


彼は
私が目線を移す前から


私を見ていた




真意の読めないその瞳




それが怖くて目を逸らす


何を思って私を見てたの?
まさか一目惚れでもされた?
人気モデルに?
それなら光栄だけど
そんなんじゃない

それならあんなにも
“無”しか映さない様な目をしてない



…無、しか…映さない……?



フと頭を過ぎった



もしかすれば



彼は私と





同類かもしれないと



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