第3章 死柄木と一般人①
薄暗く
間接照明が辺りを照らそうと色めき立つとある地下のバー
「おいおいおいおい」
手を身体の要所に着けた不気味な痩せ男
死柄木弔が、黒霧と呼ばれる男の連れて来た少女に向かって声を上げる
「何だよこいつ、ちげーだろ。誘拐対象はもっと大人のおねーさんのはずだろが」
なのに何だよこのチビは
苛立ちを隠す事はなくそう怒る
「すみません、手違いで…」
「いいよ言い訳なんか。そうじゃなくて俺は、結果を求めてるんだよ」
「はい。今直ぐ本物のターゲットの方を」
『…あの!!』
手違いで拐かされた憐れな一般人が
突然勢いよく挙手をした
「……は?…何だよ」
『帰ってもいいでしょうか?』
俺は開いた口が塞がらなかった
発言し尚も姿勢良く正座する普通の女の正気を疑った
「アホか、帰すわけねえだろ死ね」
『見逃して下さい!!』
「煩いな静かにしろよ」
立場理解してんのかこいつ
無駄に快活なガキに
苛立ちを隠せない
まぁ隠す気もないが
「死柄木…どうしますか?」
「この場所見られてんだ、生きて返すわけねぇだろ」
まあ、そうですよね。と黒霧が納得する
『じゃあ帰さなくても良いんで殺さないでください!!』
「黙れって言ってんだろ」
遂に痺れを切らし
死柄木は脅しに
女の後ろの壁を個性で壊す
女の血の気が
あからさまに引いて行くのが見て取れた
「俺はガキと礼儀知らずが大っ嫌いなんだよね…」
『っ……』
観念したのか
やっと無駄口を叩かなくなる
「あんたは運が悪かった。だから殺されるんだ。自分の不運を呪いながら、来世はそうならないようあの世で健闘するんだな」
そう言いながら
ゆっくりと女にその五指を近付ける