【イケメン革命】月小屋続編◆返還の祭典【R-18】
第10章 DAY5【ゼロ】
「俺は、人工的に『魔法を使える人間』を生み出す実験の過程で生まれた、できそこないなんだ」
「………え?」
一瞬、言葉の意味が分からず、レイアは固まる。
そんなレイアの顔を見て、ゼロは苦笑しながら続けた。
「そんな顔をするな……正直俺も記憶が曖昧なんだが…とにかく俺は作為的に作られた人間で、作り手側の望む結果が得られなかった、ということだけは覚えているんだ。魔法は全く使えない。役立たずの出来損ないだと、何度も言われたことだけは覚えている」
作為的に作られた。
役立たず。出来損ない。
そう言われていたことよりも
そんな記憶しか残っていないことが、
レイアの胸の中を切なく苦しめた。
(そんなの……悲しすぎる)
「……レイア」
名前を呼ばれて、レイアははっとなって顔を上げた。
心配そうなゼロの顔がそこにあった。
「すまない、泣かせるつもりはなかった」
「え…」
そう言われて初めて、涙が零れ落ちたことに気づいた。
「ご、ごめん……なんていうかその…」
「気にするな。第一、あの塔にいた記憶よりも寄宿学校に入ってからの記憶の方が鮮明だし……強烈だからな」
「ゼロ……」
ゼロの大きく温かな手が、少し不器用な手つきでレイアの頭を撫でる。
「過去はもうどうでもいい。今、お前がこうして…赤の軍にやってきて、仲間になった日々の方が、俺にとってかけがえのない時間なんだ」
スカイブルーの瞳が優しい色でレイアを見つめた。
レイアは、ヨナと共にクレイドルに帰還してからの日々を思い返した。
本格的に赤の兵舎に身を寄せるようになってから、ヨナの次に自分のことを気にかけてくれていたのはゼロだった。
月小屋の宴の時にはカイルが何度か助けてくれていたが、休戦協定が結ばれてからは領民やセントラル地区など軍以外の医療活動が増えたため、実際に顔を合わせることは少なかったのだ。
比べてゼロは、ヨナが訓練中や公務中も必ず顔を出してくれたり、フォローしてくれることが多かった。
困ったことがあればすぐ力になってくれたし、しょうもない悩み事も真剣に聞いてくれた。
歳はそんなに変わらないはずだが、レイアにとってゼロは兄のような存在になっていた。