【イケメン革命】月小屋続編◆返還の祭典【R-18】
第10章 DAY5【ゼロ】
兵舎の料理長から持たされたお弁当を広げながら、レイアとゼロは他愛もない話をしていた。
「お前が赤の兵舎にやってきてから一番変わったのは…たぶんエドガーだと思うな、俺は」
「え、そうかな?」
ゼロはうなづいて続ける。
「元々全く自分の内面や心情を表に出さない人間だったが…お前が来てからは時折今まで見せたことのないような顔で笑ったりすることがあったな」
そう言われてもレイアには心当たりが無かった。
「そうなのかな…」
確かにエドガーは優しいけれど時々その真意がよく分からない時があってとっつきにくい印象を持っていたのだが。
「でも、エドガーってゼロの剣術の師匠なんでしょ?」
「ああ、残念ながら、な」
「学生時代から師範クラスにいたってヨナからも聞いたけど」
「ああ、その通りだ」
ゼロは懐かしむように遠くを見つめて続けた。
「あいつは剣術だけじゃなくいろんな面で優秀だった。だがあの他人に踏み込まない性格のせいなのか本人の望みかは知らないが…友人は殆どいなかったな」
「そうなんだ」
ルカはどうやらかなり貴重な友人の一人らしい。
「ただ、馴れ合わない分先入観を持たずに接することは得意だったんだろうな…素性のはっきりしない俺とマトモに口をきこうとしたのはあいつが初めてだった」
確かにエドガーは見た目や条件で何かを判断するようには見えない。それは一緒にいてレイアにも分かった。
「血統を重んじる赤の領民にとって、俺みたいな人間は得体が知れない…避けられて当然だった。でもそんな俺に存在する意味を与えてくれたのはあいつなんだ」
傍らに置いた愛用の剣に視線をやり、ゼロはふっと笑う。
「ゼロは……魔法の塔、出身なんだよね」
レイアはおそるおそる尋ねる。
「ああ、そうだ」
「ご両親も、あの塔の人なの?」
「………」
押し黙るゼロに、レイアは少し慌てた。
「ご、ごめんね、言いづらかったらいいの」
「……あの塔で極秘裏に行われていた魔法研究の話は知ってるか」
「……少しなら。ひどいことしてたって…レイからも聞いたことある」
ゼロは首筋のタトゥにそっと触れると、ため息をつきながら言った。