【イケメン革命】月小屋続編◆返還の祭典【R-18】
第10章 DAY5【ゼロ】
「そろそろ移動するか?」
昼食を食べ終え水筒の紅茶も飲み終えると、ゼロが言った。
「そうだね。ゼロはどこか行きたい場所ある?」
「特にないが……今日はいつもの『甘いもの』はいいのか?」
ゼロが少しだけ意地悪な笑みを浮かべた。
「えっ……べ、別に絶対食べないと死んじゃうってわけじゃないけど」
そう答えるとゼロが声を出して笑った。
「…まったく、言い方がヨナに似てきてるぞ」
「えっ?!やだ、そんなことないでしょ?」
「いや、今のはそっくりだった」
なお笑い続けるゼロを横目にレイアはふくれっ面になる。
「……ていうか、ちょっと待って?ゼロだって甘いもの好きでしょ?!」
「……嫌いじゃないが?」
「あー、今の答え方はエドガーっぽいよ!」
「そんなことはない!」
そう言って、二人はいつまでも笑いが止まらなかった。
二人はお互い
今日の夜のことは考えていなかった。
その後、レイアとゼロはセントラル地区のカフェで甘いものを通常より多めに食べ、ひと通り散策した後、夕暮れと共に馬車に乗り換えて月小屋へ向かったのだった。
郊外にある月小屋へ向かう馬車を見送る二人の影が
公会堂前の広場に佇んでいた。
「何事も無く赤の軍の担当が終りそうですね」
片手にジャンクなお菓子を持ったエドガーが柔和な笑みを湛えて呟く。
「……明日からは黒の軍か…アモンの手の者より黒の幹部たちの方が有害だよ…ルカ以外」
眉根を寄せ、馬車の背を見つめるヨナが答える。
「しばらく会えないですけど、大丈夫ですか?」
「誰にモノを言ってるのさ」
「今日の隠密護衛もよく黙って遂行できましたね…えらい、えらい」
エドガーがヨナの頭を撫でようとするも、それをヨナが振り払う。
「やめてよね!もう……」
「……アモンは絶対、返還の祭典終了前に威嚇をしてくると思います。アモンとはそういう人物です。自己顕示欲が強いですから」
「……」
二人を乗せた馬車が完全に視界から消えた。
「明日からは黒の軍の担当ですが…引き続きこちらもレイアの身辺に注意しましょう。俺も調査を続けますね」
ヨナは黙って前を見据えながら深くうなづいた。
エドガーはにっこり微笑むと、ヨナの肩を叩いてその場を後にした。