【イケメン革命】月小屋続編◆返還の祭典【R-18】
第1章 返還の祭典、開幕す。
「『儀式』……ですか」
レイアは自分の血の気が引いていくのを感じた。
「そう……。これは、『月小屋の宴』を行った後にアリスがクレイドルに永住しこちらの住人と結婚することになった場合に行わなくてはいけないものなんだ」
「………」
不安げに揺れる瞳を見据えながら、ブランは続けた。
「実はこの『儀式』は今まで一度も行われたことがないんだよ…かつて月小屋の宴を行ったアリスたちは皆もとの国へ帰っていったからね……恋という魔法にかかって、こちらに永住すると決めたアリスは君が初めてだから」
恋という魔法にかかった……ブランの言葉に、ヨナの姿が頭をよぎる。
「だから、この『儀式』の存在は僕以外誰も知らない。幹部も皆知らないはずだ」
「あの……ブランさん、それって…」
ブランは豊かな芳香を放つ紅茶を一口飲むと、レイアをまっすぐ見つめて言った。
「それは『返還の祭典』」
「………へんかんのさいてん?」
首をかしげるレイアに、ブランは深くうなづく。
「文字通り、貰った能力を返還する…つまり君に返す、という儀式なんだ。これを行う理由はいくつかあるんだけど、まず一つが…」
ブランはココアパウダーの入ったクッキー5枚と、ジンジャークッキーを5枚、お皿に並べる。
「各幹部が君から貰い受けた能力の『量』にはばらつきがある。しかも、何回使用したかによっても残りの『量』が変わってくる…こうしてフラットに幹部全員を並べた時、ヨナを除いた全員は、能力の残量がバラバラだね」
「はい…」
(ヨナは能力をもらいすぎってくらい貰ってる、という意味だよね)
ジンジャークッキーが1枚だけ外され、「例外扱い」される。
「だから一旦全員が、自分の持つ能力を全て君に返すんだ」
全てのクッキーが、切り分けたシトラスパイの前に積まれる。
「でも、こうして返すならそもそも最初の『分け与える』儀式っていらないんじゃ…」
「いい質問だね。実はこの『返還の祭典』は、結婚するからこそ行わなくてはならないんだ」
「え?」
結婚と、能力の返還が結びつかず、レイアは首をかしげる。
「結婚したらいずれ子どもができるかもしれない」
「えっ……」
ブランはにこやかに一呼吸おいて続けた。