【イケメン革命】月小屋続編◆返還の祭典【R-18】
第4章 DAY2【ヨナ・クレメンス】
全ての手配が終わった頃、空は茜色を帯び始めていた。
「はぁ、疲れたね」
公会堂前の噴水広場。
レイアはヨナと二人、ベンチに深く腰を下ろす。
「なんだか今日は…デートらしいデートができなかったな」
ヨナは空を仰いでぼやいた。
ヨナとはこの一年、デートらしいデートを何度もしてきた。
本当は今日のように結婚式の準備をする日は本来、わくわくして胸がいっぱいになる1日になるのだろう。
でも、今日一日で最低限のことを決めなくてはいけない状況の中、ゆっくり幸せに浸ることもできず、全てが事務的に淡々と進んでしまった。
(ドレスや指輪…もっとヨナにちゃんと見てもらいたかったな……)
「……どうしたの、レイア」
ぼーっとしていると、ヨナが顔を覗き込んでくる。
「え、ううん…なんでもないよ」
「なんでもないって顔じゃないよ」
「う……」
(私、そんなに顔に出てるのかな……)
するとヨナが両手でキュっとレイアの顔を挟んだ。
「どれだけ君と一緒に過ごしてきたと思ってるの。君のことはすぐ分かるよ」
「………」
(ヨナって、こういう時は勘が鋭いんだよなぁ)
エドガーの変な冗談にはすぐ騙されたりするのに。
「あのね、ヨナ」
「何?」
ヨナは向き直って姿勢を正す。
「今日選んだドレスとか指輪……本当にあれで良かった?」
その言葉にヨナは眉間にしわを寄せた。
「……なにそれ、どういう意味?」
「えっと…なんていうか、試着した時とかも、ちらっと見ただけで『君がいいならいいんじゃない?』って言ってたから、ヨナはちゃんと納得してたのかな、って」
するとヨナは少し苛立ったようにため息をひとつついた。
「あのさぁ…ドレスは君が着るものでしょ?いいかどうかは俺が決めるんじゃなくて君が決めるものじゃないの?」
「それはそうなんだけど……」
「それに、時間は今日しかないんだから仕方ないじゃないか。もう変更する時間ないよ?」
「わかってるけど、そうじゃなくて…」
「じゃあ何?」
険悪な空気が二人の間に流れる。
(イライラしてるなぁ、ヨナ)
「あれ、ヨナさんとアリス?」
すると後ろから二人を呼ぶ声が聞こえた。